出会い系の恩恵
平常心の時でさえこうなのに、Hさんと電話やファクスで連絡をとり、ドキドキ、ハラハラ、心が揺れ揺れの状態の時も、私は運転を強行していた。
仕事を見つけ、再開してからも、私とHさんは連絡をとり続けていた。
Hさんはイヶナイと思ってはいたろうが、さして深刻な気持ちではなかったと思う。
私は夫と離婚話をしていることを、彼に話していなかった。
Hさんとの関係はそれほどのものとはいえなかったし、私たちの離婚話に、Hさんといえども、他人に出てきてほしくなかつたのだ。
私たちが住んでいたのは官舎だから、個人の都合でどうすることもできないが、できることなら、このゴッキーだらけの官舎をプチ壊し、新しいものに建て替えたい、くらいの気持ちではあった。
私は、平静に振る舞えない。
「どこ、行ってたの?」ウソをでっち上げる余裕などなく、Sで当て逃げしてしまったことを白状した。
夫はすぐコンビニへ直行。
擦った車の持ち主を突き止め、適切な事後処理をしてくれた。
私が手紙や電話、ファクスをして、私の都合のいい時に合わせて、彼が電話をかける、という具合に、私たちは共犯関係を結んだ。
そのため、私から彼に連絡を入れることが増えていた。
なかでも、私はファクスという連絡方法を愛用していた。
当時、ファクスは家電というほど普及していなかった。
そのため、わざわざコンビニなどから、ファクスを送らなければならなかった。
ウチから歩いて5分ほどのSにファクスがあるので、私は仕事帰りにSヘ寄って彼にファクスを送ろうとした。
ウチのそばで浮気相手と連絡をとる、という状況は、ドキドキがまた、ひとしおなものだ。
ふるえる手でファクスを送り、店を出て、車に乗り込む。
エンジンをかけ、駐車場を出ようとした時、隣りの車のバンパーに私の車が擦ってしまった。
さすがの私も、笑い飛ばす度胸はない。
動転して、心臓がバクバクした。
いったん止めた車をまた急発進させ、ウチに逃げ帰ってしまった。
には、仕事から一戻ったばかりの夫がいた。
ウチには、「おかえり」「なんで、コンビニなんか、行ってたの?」Sから戻った夫が聞いた。
ウチの目の前にスーパーがある。
たいていの用事はそこで足りるはずなのだ。
まだ、頭の芯がボーッとしていた私は、答えにつまった。
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